フォアボールをわざと与えることは勝つための作戦!敬遠のメリットを深堀

ピッチャーがストライクを3つ取ると三振、ボールが4つになるとフォアボールというのは、誰もが知っている野球のルールです。

ピッチャーはヒットを打たれないことと同時に、フォアボールを出さないよう投げることが求められます。

しかしながら、戦略として、わざとフォアボールにしてランナーを出す敬遠という作戦が行われることもあります。


わざとフォアボールを出す理由としては、打たれる確率の高い強打者を避けて、打ち取りやすい打者との対戦を選ぶことや、併殺打をとりやすくするために空いている一塁をランナーで埋めることなどがあげられます。

今では敬遠する旨を審判に伝えるだけでフォアボールになるという申告敬遠という方式が採用されています。

今回はなぜわざとフォアボールを出すのか?という点について、その作戦の理由を深堀りします。



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フォアボールをわざとする理由は?

申告敬遠は時間短縮と投手の負担軽減に。予期せぬプレーが起きない寂しさもあります。

わざとフォアボールを出すことを、敬遠、もしくは故意四球と言います。

以前はキャッチャーが投球前から立ち上がる、あるいは座ったまま極端に外角に構えて、打者から遠く離れた所へ4つボールを投げさせる形でした。

現在では申告敬遠という方式が採用されており、投球前に監督が審判に敬遠する旨を通告することで、ピッチャーが4球投げる必要なくフォアボールが認められ、打者が一塁へ出塁することができます。

申告敬遠は、メジャーリーグでは2017年から、日本のプロ野球では2018年から採用されました。

申告敬遠の主なメリットは試合時間短縮です。

単純に投手が4球投げるだけの時間が短縮されます。

また、申告敬遠の場合はピッチャーの球数には反映されないため、ピッチャーの負担軽減という見方もあります。

一方で、申告敬遠が通告された場合は、打者が一塁へたどり着き、審判がゲーム再開を告げるまでの間はボールデッド(タイム状態)となります。

敬遠の球を強引に打ったり、敬遠するために投じた球が暴投になるなどの予期しない光景が見られなくなり、残念がるファンもいたようですね。



松井秀喜選手が甲子園で全打席敬遠!強打者との勝負を避けるための作戦

わざとフォアボールを出す理由はいくつかあげられます。

一つは、打たれる確率の高い強打者との勝負を避け、打たれる確率の低い次の打者との勝負を選ぶためです。

これは必ずしも4番打者とは限りません。

長打力はなくとも打率3割を打つ3番打者と、30本塁打打っても打率が2割ほどの4番打者であれば、確率として打たれやすい3割打者を敬遠し、あえて4番打者と勝負するという選択もあります。

他にも、打順に関わらず、対戦成績など、分の悪い打者を避けるため敬遠する場合もあります。

また、セリーグに限りますが、次の打者がピッチャーの場合に、その前の打者を敬遠するという方法も頻繁に用いられます。

強打者を敬遠する作戦で大きな物議を醸したのが、1992年の夏の甲子園大会。

星陵高校の強打者松井秀喜選手が、対戦相手の明徳義塾高校から全打席敬遠されます。

当時は社会的議論にまで発展しましたが、結果として明徳義塾高校はこの作戦が功を奏し、優勝候補の星陵高校に勝利しています。



併殺打を狙うための敬遠策は、ベンチワークの見せ所

もう一つは、2塁または3塁にランナーがいる場合、併殺打をとりやすくするために1塁もランナーで埋める方法です。

1塁以外にランナーがいる場合、ランナーをアウトにするためには、ランナーに直接タッチをする必要があります。

その分時間差が生じ、2つ以上のアウトを同時に取ることが難しくなります。

そのため、あえて1塁にもランナーを置き、塁を埋めることで、ベースタッチのみでアウトがとれるようになり、併殺打に打ち取れる可能性が高まります。

また、1点もやれない場面で打者を敬遠して満塁にし、次の打者でホームゲッツーを狙うという作戦もあります。

こういった作戦がはまり、ピンチを脱した時には、ベンチも「良し!」という感じで盛り上がります。

リスクをとることで勝負に勝つ。

これぞベンチワークの見せどころですね。



タイトルのために相手チームの選手を敬遠。現代でも見られる残念な慣習

シーズン最終盤で、自分のチームメイトがタイトル争いをしている相手に対し、打つ機会を与えないために敬遠することもあります。

1982年のセリーグの首位打者争いは、中日ドラゴンズの田尾安志選手と横浜大洋ホエールズの長崎啓二選手の一騎打ちでした。

その両チームがシーズン最終戦に対戦すると、横浜大洋ホエールズは、自軍の長崎啓二選手に首位打者を獲らせるために、田尾安志選手を全打席敬遠し、勝負を避け続けます。

最終5打席目に田尾安志選手がわざと敬遠の球を空振りし、抗議の姿勢を見せたことは有名です。

結果、長崎啓二選手はわずか1厘差で初の首位打者を獲得します。

1984年には、同数で本塁打王争いをしていた阪神タイガース掛布雅之選手と、中日ドラゴンズの宇野勝選手が、シーズン最終盤の直接対決でお互いに10打席連続敬遠をされました。

この状況に、当時のセリーグ会長が両チームの監督に厳重注意する事態とまでなります。

しかしながら、その後も現代にいたるまで、タイトル獲得のための敬遠という作戦は度々見られ、スポーツマンシップにかけると批判を受けています。

敬遠は実際には通常の四球と同じ扱いであるため、ルール上問題はないのですが、チームの勝利のための戦術であるとともに、場合によってはこれらの行為によって物議を醸すことにつながります。



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フォアボールをわざとするのはなぜ?【まとめ】

今回はわざとフォアボールを出す敬遠という作戦について、深く掘り下げてみました。

ピッチャーにとっては当然ランナーを増やすことでリスクは高まりますが、勝つための大事な戦略の一つに違いありません。

強打者を敬遠した直後の「さあ勝負だ!」という覚悟を決めたピッチャーの表情もなかなかりりしく感じます。

一方で、正々堂々と勝負することを望むファンとしては、「逃げた」と解釈し、時には観客席からブーイングが起こることもあります。

ベンチ・ピッチャー・バッター・ファンと、様々な視点から様々な思惑が渦巻く敬遠という作戦も、こうして見てみると、なかなか奥深いものが感じられますね。