ヤクルトがデッドボールを与えるのが多いのは本当?実際のデータを調べてみた

2023年シーズン、前年まで2年連続セリーグ優勝を果たしていたヤクルトスワローズは、予想外の低迷により5位に終わっています。

3月に行われたwbc帰りの村上宗隆選手・山田哲人選手の不調なども響きましたが、なんといっても投手陣の崩壊が目を覆わんばかりでした。

そんな中、相手チーム打者へのデッドボールが多いと、他球団のファンから批判を浴びています。

2023年にチームとしてデッドボールを与えた数は63個。

これは読売ジャイアンツに次いで2番目に多い数です。


さらに、相手チームの主力級の打者に当てることが多いと言われ、そのため、一部では「わざと当てている」との声さえ上がってしまいました。

なぜヤクルトスワローズはデッドボールを与えることが多いのか?

実際のデータをもとに詳しく調べてみました。



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ヤクルトのデッドボールが多いのは本当?

2023年シーズンのセリーグ各球団のデッドボールを与えた数は、ワースト1位が読売ジャイアンツの64個、ワースト2位がヤクルトスワローズの63個です。

デッドボールが多いと言われるヤクルトスワローズですが、1個の差でありながらも読売ジャイアンツの方が実際には多くデッドボールを与えています。

また、選手ごとの数字では、広島東洋カープの九里亜蓮選手が1位で10個、次いでヤクルトスワローズの小澤怜史選手・中日ドラゴンズの高橋宏斗選手・阪神タイガースの青柳晃洋選手が9個です。

チームごと・選手ごとの成績を見ても、多いとはいえ実際にはそれほどヤクルトスワローズだけが突出した数ではないということがわかります。



デッドボールの数よりも、相手チームの主力に当ててしまうことが批判の的に

ヤクルトスワローズにデッドボールが多い印象が強いのは、対戦チームの主力級の選手に当てることが多いからと言われています。

8月13日、阪神タイガースの正捕手梅野隆太郎選手は、今野龍太選手からデッドボールを受け骨折。

シーズン中の復帰が絶望的となりました。

8月19日の中日ドラゴンズ戦では、木澤尚文選手の投球が中日ドラゴンズ4番の石川昂弥選手の頭部に直撃。

石川昂弥選手は病院へ運ばれ、その後1週間ほど戦列を離れます。

8月23日の読売ジャイアンツ戦では、小川泰弘選手の投球が、読売ジャイアンツ坂本勇人選手の頭部をかすめます。

この時は、避けた際に手に当たったとのことでデッドボールと判定されました。

そして9月3日、優勝を目前とした阪神タイガースの1番打者近本光司選手の脇腹に山本大貴選手がデッドボールを与えます。

近本光司選手は7月に読売ジャイアンツ戦で受けたデッドボールで骨折し長期離脱、ようやく復帰したばかりで、このデッドボールは大きな物議を醸しました。

このように、相手チームにとって欠かせない選手に多く当ててしまう印象があります。



不調の投手陣による、内角へのコントロールの未熟さがデッドボールにつながる

ヤクルトスワローズの投手がデッドボールを当ててしまう原因はどこにあるのでしょうか?

阪神タイガース近本光司選手へデッドボールを与えた翌日、ヤクルトスワローズ江幡秀則球団専務は、

「ぶつけちゃいけないけど、インコースを狙わないと勝負にならない。(略)うちの投手にインコースギリギリを投げる技術がなかったんだと思います」

と語っています。

2023年のヤクルトスワローズの投手成績は、防御率3.66、失点567、自責点516と、どれもセリーグのワーストの記録です。

投手陣はまさに崩壊寸前と言ったところでしょうか。

江幡秀則球団専務が言うように、相手チームの強打者に対しては、強気にインコースを攻めていかなければ、打ち込まれます。

しかしその内角攻めに必要なコントロールが、総じて良くなかったというのが原因でしょう。

逆に言うと、これほどまで課題がはっきりしているチームも珍しいのではないでしょうか。



相手チームへの敬意が足りないことが、ファンの怒りを買ってしまう

デッドボールを与えた相手チームへの配慮が足りなかったという指摘もあります。

デッドボールを与えてしまった投手は、帽子を取り謝罪をします。

また、一塁に歩いた選手に対して、一塁手が重ねてお詫びをするシーンや、頭部へのデッドボールなど大きなケガにつながる場合は、監督自らその場で相手チームの監督へ謝罪をする場面も見られます。

メディアに映るシーンはその前後の一部なのかもしれませんが、確かに相手チームや選手に対するお詫びの姿勢が足りないように感じます。

高津臣吾監督はピッチャー出身の監督です。

一部ファンからは「ピッチャー出身なので、デッドボールを与えるのは何も悪くはないと思っているのではないか」という憶測が流れることもありました。

また、昨今のプロ野球界では一つ一つのプレーに対する球場の演出や、選手のファンサービスが派手になっています。

中日ドラゴンズの石川昂弥選手がデッドボールを受け退場したその試合後、ストッパー田口麗斗選手がファンの前で恒例のパフォーマンス「勝利の舞」を演じ、中日ドラゴンズのファンの逆鱗に触れ、炎上してしまいます。

阪神タイガースの近本光司選手にデッドボールを与えた山本大貴選手が、その後後続を抑えると、球場に「ナイスピッチング!」という派手なアナウンスが流れ、阪神タイガースファンを怒らせることとなりました。

ファンを喜ばせる演出やパフォーマンスは、一方で相手チームに対する敬意が感じられないと思われやすいことも、頭に入れておかなければなりません。



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ヤクルトのデッドボールが多いのは本当?【まとめ】

今回はヤクルトスワローズがデッドボールを与えることが多い原因を調べてみました。

もちろん少ないわけではありませんが、その数よりも、当ててしまった打者やその後の対応のまずさにより、「ヤクルトスワローズはデッドボールが多いチーム」と強く印象付けられたものと思われます。

かつては日本でも「目には目を、歯には歯を」の時代もあり、デッドボールの報復合戦が展開されることもありました。

メジャーリーグでは今でもそのような慣習が見られます。

しかしながら、今のプロ野球では、故意ではないとしても、相手チームへの敬意や配慮が特に必要な時代ではないでしょうか。

2023年に噴出してしまった、投手力の強化や相手チームへの配慮不足など、改善すべきところは改善し、誰からも愛されるようなチームとして、また歴史を重ねていって欲しいものです。