スカイライン400rが遅いのはなぜ?ライバル車種に燃費まで負けている実態

スカイラインは、日本人にとって特別な車種です。

レースでも伝統的な花形車種で、スカイライン好きは、燃費なんかお構いなしの走り屋ばかりです。

日産は、2019年にマイナーチェンジを断行しました。


その時に車好きを驚かせたのが、400rという特別仕様車です。

スカイライン初の400馬力エンジンを搭載というのが売りでしたが、評価は様々です。

車好きであるほど「遅い」との声も聞かれ、リミッター解除も模索されるほどです。

なぜ400rは「遅い」と感じるのか?

今回は、そうした不満を解消できるのか、考えてみました。



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スカイライン400rは本当に特別なのか?

スカイライン400rは、通常グレードのGTに比べると100万円以上も高かったのですが、値上はあまり違いがわかりません。

スカイライン400rがどこまで特別なのかを、まずは検討しましょう。



*GTとどこが違うのか

まずは、通常グレードのGTと400rはどこが違うのか、整理しておきましょう。

2019年のマイナーチェンジでは、ガソリン車に限ればGT、同タイプP、同タイプSP、そして400rがラインナップされました。

この4グレードのスペックを比較すると、エンジンの最高出力と最大トルク以外、見事に同じです。



*400rのエンジンを数字で見ると

出力というのは前進しようとする力、トルクというのは加速しようとする力と考えてもらえば結構です。

400rのエンジンの最高出力は、405ps(298kW)/6400rpmです。

psとkWは馬力の単位で、rpmはエンジンを安全に回転させられる限界値と考えてもらえばよいでしょう。

GTは304ps(224kW)/6400rpmですから、400rは単純に1.3倍超の馬力ということです。

次に、400rの最大トルクは48.4kg・m(475N・m)/1600~5200rpmです。

kg・mもN・mもトルクの単位で、GTは40.8kg・m(400N・m)/1600~5200rpmですから、400rは単純に1.2倍ほどということになります。


*400rが遅いと感じる理由

すでに明らかだと思いますが、100万円以上の価格差であることを考えた場合、さほどすごさは感じないというのが正直なところです。

たとえば、同じスカイラインでも、2006年発売の250GTと350GTタイプSを比べた場合、総排気量が大きく異なるので当然ですが、最高出力と最大トルクの差は、ともに1.4倍ほどでした。

それにもかかわらず、価格差は70万円ほどでしたから、400rのコスパは明らかに悪いのです。

なぜ400rを「遅い」と感じるのかという疑問に、まずは1つの答えが出ました。




スカイライン400rはそれでもすごい?

ここまで見た通り、過去のスカイラインと比べても、400rが特別にすごいとは言えません。

しかし、筆者も含めてスカイラインに思い入れが強いと、どうしても擁護したくなります。

ここでは、400rとまさに総排気量が同じトヨタ・スープラRZ、そしてファン層が似ていると(勝手に)解釈しているホンダ・シビック・タイプRと比較しましょう。


*スカイライン400rとスープラRZ

日産の最大のライバルであるトヨタのスポーツカーと言えば、スープラです。

スープラも、厳しい時代に復活したスポーツカーとして話題をさらいましたが、復活年もスカイラインと同じ2019年でした。

その際のRZというモデルが、まさにスカイライン400rと同じ総排気量なのですが、最高出力は340ps(250kW)/5000rpm、最大トルクは51.0kg・m(500N・m)/1600~4500rpmです。

つまり、馬力はやや劣るものの、加速力は圧倒的にスープラの方が上ということです。

しかも、スポーツカーで燃費を考えるのもどうかと思いますが、スープラの方が400rより2.2km/lほど燃費がよいので、効率もよいということになります。

RZの方が、400rより130万円以上高いのですが、コスパという点ではRZが圧倒していると言えます。


*スカイライン400rとシビック・タイプR

スープラを持ってくるのはやりすぎという声も聞こえそうですので、もう1つのライバルであるホンダに目を向けましょう。

こちらにも、走り屋にはおなじみのシビック・タイプRという車種があります。

2020年のモデルでは、総排気量がスカイライン400rの3分の2ほどですが、最高出力は320ps(235kW)/6500rpm、最大トルクは40.8kg・m(400N・m)/2500~4500rpmです。

難しい分析は抜きにしますが、総排気量とエンジンの回転数をふまえると、スカイライン400rに勝るとも劣らない性能です。

やはり燃費も、スカイライン400rより3km/lほどよいので、価格帯が400万円台後半であることもふまえると、コスパが抜群です。


*スカイライン400rの擁護は難しい?

検討すればするほど、スカイライン400rがすごいとは、なかなか言えなくなります。

なぜ日産はスカイラインを復活させ、なぜ400rを投入したのかという疑問は、解消するどころか、ますます深まります。

やはり、電気自動車に注力するあまり、伝統的な車づくりに影響が及んだのでしょうか?
しかし、ここでも難しい分析は抜きにしましょう。


リミッター解除で400rのポテンシャル解放?

ここまでの結果では、スカイライン400rの存在意義は希薄になる一方です。

伝統的なファンとしては何とも悔しい限りですが、ここで考える必要があるのは、日本の自動車法制で、自動車の能力は限界値まで引き出せないようになっているということです。

代表例が、180km/h(軽自動車なら140km/h)までしかスピードが出ないようにするリミッターです。

*リミッター解除は合法的にできる

小学生の頃、ドイツ車のメーターを見て、280km/hまで目盛りがあるのには驚きましたが、日本車のリミッターはあくまで自主規制なので、解除することは合法的に可能です。

リミッターを解除しても、サーキット等以外で速度超過にならなければよいわけです。

自動車整備工場へ持っていけば、10万円単位の値段でできるようです。


*スカイライン400rのポテンシャルとは?

400rを遅いと感じる人は、多くの場合レース等を想定しているので、リミッター解除も1つの方法として考えられます。

日本車も、リミッター解除を行えば200km/hは余裕で出るようですが、400rとなれば、その馬力から300km/h近くまで出るはずです。

つまり、400rを遅いと感じるのは、日本の自動車法制を意識した結果と言えます。



*リミッター解除と燃費の関係

リミッター解除を考える車好きが心配するのは、燃費の悪化です。

最高速度を引き上げるわけですから、それだけ燃料を食うという理屈です。

ところが、一概にそうも言えないようです。

むしろ、リミッター解除によってエンジンの効率が高まり、燃費がよくなるという説も見かけます。

ただ、すでに見た通り、400rの場合はデフォルトの燃費がすでに悪いので、その馬力をフルに発揮すればするほど、燃費は悪くなると考えた方がよいでしょう。

そもそも、燃費を気にするくらいなら400rに乗るなということですね。



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スカイライン400rが遅いのはなぜ?【まとめ】

日本の道路で安全に走ることを前提とすると、400rに対する「なぜ?」は解消されそうもありません。

400rを遅いと感じる人は、間違いなく筋金入りのスカイライン好きであるため、我慢ならないのだと思います。

5代目C210型以来のファンである筆者としては、もう1度スカイラインのコンセプトを原点へ回帰させてはどうかと考えています。

かつてのようなスポーティなセダンに戻らないと、スカイラインの復活はないと考えるからです。